こちらでは「受益者」についてご説明いたします。
受益者とは、信託財産の運用等により発生した利益を受ける“権利者”のことをさします。原則として受益者を選ぶのは委託者です。「受益者となる人」に制限はなく、家族や親族のほか法人が選ばれることもありますし、委託者自身がなることもできます。
受益者もその立場ゆえ、受託者の監督および解任・選任を行う権利を有しています。しかし受益者が未成年者や認知症の方の場合、受益者自身で受託者を監督するのは現実的ではありません。
そのような際には、信託契約において「受益者代理人」を定めておき、受益者が不利益を被ることがないようにしておきましょう。
受益者が亡くなった場合は
委託者の地位と同様に、家族信託において受益者の権利である「受益権」は相続の対象とされ、法定相続人が引き継ぐことになります。
ただし信託契約時に受益者が亡くなった時を想定し、第二次受益者、第三次受益者と決めておけば、委託者の望む形で受益権をつなぐことが可能です。このことを、「受益者連続型信託」といいます。
なお、受益者の死亡等を理由に、受託者=受益者となるケースもあります。信託にはこの状態が1年継続すると信託契約が終了するというルールがあるため注意しましょう。ただし、ルールの対象となるのは受託者と受益者が完全に一致する場合のみです。
節税と家族信託の関係
相続における登録免許税という観点からみれば、家族信託には節税効果が期待できます。
相続登記において所有権を移転する場合、不動産の固定資産税評価額の0.4%が登録免許税として発生しますが、受益者の変更登記は一件あたり1,000円です。
贈与税に注意
税務上、「家族信託の受益者=実質の所有者」と考えられるため、受益者によっては贈与税が課せられる場合があります。
委託者A、受託者B、受益者A(委託者=受益者)の場合=自益信託
Aは自分の財産であったものから生じた利益を自身で受け取るので、課税されない。
委託者A、受託者B、受益者C(委託者≠受益者)の場合=他益信託
信託財産より利益を得るのはCなので、贈与とみなされる。年間110万円以上の利益が発生する場合には、贈与税を納めなければならない。